みなさま、「浴衣の日」ってご存知ですか?
7日7日が「浴衣の日」。その日が示す通り、七夕、古くは乞巧奠(きこうでん)といわれた行事に基づいて制定されています。乞巧奠とは、そもそも女性の裁縫の上達を願う行事であったとか。以前は和裁の入門として、浴衣を縫うことが多く行われていました。そんなことからもこの日が「浴衣の日」に選ばれたのかもしれませんね。
今回は、この「浴衣」について、もっと気軽に楽しんでいただきためのヒントをお伝えします!
浴衣の日に考える、昔の浴衣と今の浴衣の違い
いま、浴衣はとても便利な衣服になっています。以前に比べて素材も柄ゆきも豊富になっているため、デパートで売られている浴衣はほとんどが「下に長襦袢を着れば、夏着物としても着られます」というもの。フォーマルな場を除けば、ほとんどの場所に着ていくことができます。
「綿コーマ」と呼ばれる、昔ながらの生地の浴衣はやはり浴衣らしく、一枚でキリッと着るのが美しい。昼の町歩きやお祭りなど、着て行く場所はやや限られますが、私は大好きな浴衣です。
浴衣と着物は、構造はほぼ同じ。約11メートルの真っ直ぐな反物から、さまざまな体型に合わせた「その人だけの浴衣」が仕立てられることに、いつも驚いてしまいます。
着物より気楽に、より身近に「和」の世界に触れられる浴衣。若い人達のものと決めつけずに、大人だからこそ楽しめる「大人の浴衣」をこの夏一枚手に入れてみては如何でしょう?
さて、この浴衣、どんな場所まで出かけられるものか。あえて「長襦袢ナシ」のバージョンで考えてみたいと思います。
- カフェ…OK
- 気軽なお店でのランチ…OK
- 街歩き…OK
- 映画館…OK
- 居酒屋さん…OK
着物の世界には「格」という概念があり、それが話を面白くもややこしくしているのですが、私が考える浴衣の格は、洋服でいうと「Tシャツ+デニム」と一緒。
つまり、「Tシャツ+デニム」という姿の方のいる場所であれば浴衣でも大丈夫、ということです。日本中の、ほとんどの場所がOKということですね。
逆に「Tシャツ+デニム」で行くのはちょっとはばかられる、という場所であれば浴衣で出かけるのは考え直した方が良いかもしれません。高級ホテル、歌舞伎などの観劇、敷居の高いフレンチ、お寿司屋さん…といったところでしょうか。
私もあまりお邪魔する機会は多くありません(笑
季節を思い切り楽しむ、浴衣の柄
金魚や朝顔などの夏らしい柄は、本当に良いものですよね。着物は高価なだけに、季節を限定する柄を選ぶのは勇気のいるものですが(でも季節にかなった柄を着ている方は、本当に素敵です!)浴衣は何と言っても「夏のもの」。思い切り夏らしい柄を楽しむことができます!
ところで、萩や菊などの、秋を思わせる柄の浴衣をご覧になって不思議に思われたことはありませんか?
「夏なのに、なぜ秋の柄なのかしら?」
実はこれにもちゃんと理由があります。
着物の世界では「季節をちょっぴり先取りするのは粋なこと」とされており、特に真夏に秋を連想させる柄を身につけることは見る人にとって涼しげ、ということで喜ばれているのです。
面白いですよね!
最後は、帯の話。着物より素材が豊富なんです!
昔から浴衣には半幅帯(通常の名古屋帯や袋帯に比べて幅が約半分になっているもの)が一番多い組み合わせでした。この半幅帯、上手に選べば浴衣だけでなく普段着の着物にも締められるという、大変便利なもので、気軽に様々な帯結びを楽しむことができます。私も半幅帯が大好きです!
夏なら麻や紗(透け感の多い、夏向けの生地)もいいですね。
ちなみに半幅帯に限らず、夏の帯は6月から9月まで締めることができますが、あまり透け感のないものから始まって徐々に透け感が多くなり、真夏はかなり目の粗い芭蕉布などが登場、また秋に近づくにつれて透け感を少なく…といった使い分けをいたします。
この素材のバリエーションは夏の帯ならでは、着ている本人はもちろんの事、周囲の方の目にも楽しんでいただけるのでは…と感じます。
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まとめ
色々と不思議なことの多い着物の世界ですが、浴衣なら気軽に楽しんでいただけるのではないでしょうか。「若い人のものだから」と思わずに、ぜひお店を覗いてみて下さいね。そして出来れば、浴衣ならではの大胆な柄を楽しんで下さい!皆さまの夏が、良いものでありますように。
この記事の執筆者
遠藤
(えんどう)-
外資系企業勤務の傍ら22才より着付けを学ぶ。大手きもの学院に入学後、師範の資格を取得。2003年より吹田市千里山の自宅にて着付け教室を主宰。「分かりやすく、やさしく、お金のかからない」指導をモットーに活動中。